ばーか
こんにちは。
ナインです。
本日も本の紹介です。
今回紹介する作品は
『馬地獄』
です。
織田作之助の作品です。
当ブログでは織田作之助の作品紹介するのは初めてです。
少し解説をば。
織田作之助、通称織田作と呼ばれています。
代表作は『夫婦善哉』でしょうか。
この作品については、いずれ紹介出来ればなと思っているので、ここでは触れないことにします。
織田作の作品に『青春の逆説』という自伝的な作品があるでのすが、戦時中に発禁となりました。
今読めばそんなに大それたことは書いてないのですが、やはり戦時中では勝手が違ったのでしょうね。
そんな織田作ですが、彼は結核のため33歳という若さでこの世を去っています。
今回紹介する『馬地獄』は短編ですぐに読み終わるので、是非ご一読ください。
ネタバレありですので、お気をつけください。
あらすじ
東より順に大江橋、渡辺橋、田簑橋、そして船玉江橋まで来ると、橋の感じがにわかに見すぼらしい。橋のたもとに、ずり落ちたような感じに薄汚い大衆喫茶店兼飯屋がある。その地下室はもとどこかの事務所らしかったが、久しく人の姿を見うけない。それが妙に陰気くさいのだ。また、大学病院の建物も橋のたもとの附属建築物だけは、置き忘れられたようにうら淋しい。薄汚れている。入口の階段に患者が灰色にうずくまったりしている。そんなことが一層この橋の感じをしょんぼりさせているのだろう。川口界隈の煤煙にくすんだ空の色が、重くこの橋の上に垂れている。川の水も濁っている。
ともかく、陰気だ。ひとつには、この橋を年中日に何度となく渡らねばならぬことが、さように感じさせるのだろう。橋の近くにある倉庫会社に勤めていて、朝夕の出退時間はむろん、仕事が外交ゆえ、何度も会社と訪問先の間を往復する。その都度せかせかとこの橋を渡らねばならなかった。近頃は、弓形になった橋の傾斜が苦痛でならない。疲れているのだ。一つ会社に十何年間かこつこつと勤め、しかも地位があがらず、依然として平社員のままでいる人にあり勝ちな疲労がしばしばだった。橋の上を通る男女や荷馬車を、浮かぬ顔して見ているのだ——。
感想
男に騙される。
全くその通りだろう。
男が金がないと言ったのは嘘であり、主人公は詐欺にあうという話だ。
しかし、そんな目にあったにも関わらず、主人公は「彼はもうその男のことを忘れ、びっくりしたような苦痛の表情を馬の顔に見ていた。」とある。
少しばかり反応が淡白なのではと思ってしまう。
それに直ぐに忘れてしまっている。
もちろん馬の顔に見たのは主人公の感情なのであろうが、何故それがに怒りや悲しみではなくて、苦痛なのだろうか。
個人的な見解は、他人を憐れんでいた自分こそが真に可哀想な存在だと気がついたのではないかというものだ。
自分が可哀想だと思った人間に実は馬鹿にされていた。
こんな間抜けな話はないだろう。
たしかにそういうことならば、苦痛を感じるのもわかるというものだ。
おわりに
織田作の文章の上手さは、これまで紹介してきた作家の中では、一番なのではと思うほどです。
その部分にも注目していただけたらなと思います。
最後までお読みくださりありがとうございます。