ボトルメッセージ


こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

『瓶詰地獄』

 

です。

夢野久作の作品です。

夢野の代表的な作品といえば、やはり『ドグラ・マグラ』でしょうか。

奇書として有名ですよね。

いまのところ夢野の作品をシリーズ化する予定はありませんが、いつか突然シリーズ化するかもしれません。

ネタバレがガッツリありますので、お気をつけください。

あらすじ

 拝呈 時下益々御清栄、奉奉慶賀候(けいがたてまつりそうろう)。陳者(のぶれば)、予てより御通達の、潮流研究用と覚しき、赤封蝋附きの麦酒瓶、拾得次第届告(とどけつげ)仕る様、島民一般に申渡置候処(もうしわたしおきそうろうところ)、此程、本島南岸に、別小包の如き、樹脂封蝋附きの麦酒瓶が三個漂着致し居るを発見、届出申候(とどけいでもうしそうろう)。右は何れも約半里、乃至(ないし)、一里余を隔てたる個所に、或は砂に埋もれ、又は岩の隙間に固く挟まれ居りたるものにて、よほど以前に漂着致したるものらしく、中味も、御高示の如き、官製端書(はがき)とは相見えず、雑記帳の破片様のものらしく候為め、御下命の如き漂着の時日等の記入は不可能と被為存候(ぞんぜられそうろう)。然れ共、尚何かの御参考と存じ、三個とも封瓶のまま、村費にて御送附申上候間(もうしあげそうろうあいだ)、何卒御落手相願度(あいねがいたく)、此段得貴意候(きいをえそうろう) 敬具
    月   日
                    ××島村役場※[#丸印、U+329E、36-10]
 海洋研究所 御中

感想

『瓶詰地獄』は短編ながらも、後の小説に大きな影響を与えたともいわれているほどの傑作だ。

この話はたった三通の手紙の内容だけで完結する。

しかし、たった三通の手紙でありながら、読み進めてしまう構成力には圧巻である。

『瓶詰地獄』では、新しい手紙から読み進めていき、最後に無人島に漂流した時に流したメッセージを読むことになる。

今でこそよくあるような流れだが、『瓶詰地獄』はそういった流れのはしりのような作品なのだ。

そういった意味で後の小説に大きな影響を与えた作品なのだ。

 

さて、話の流れなのだが、手紙を古い順に見ていこう。

最初に書かれた手紙が、両親に宛てた救助要請だ。

「私はよくアヤ子を生徒にして、聖書の言葉や、字の書き方を教えてやりました。」からわかるように、文字がカタカナなのは、まだ幼く文字をあまり書けないアヤ子が書いたためだろう。

 

次に二通目の手紙だ。

この手紙は太郎が書いたもので、島での暮らしについて書かれている。

太郎たちがどうやって過ごし、どのように成長したかということがわかる。

そして、過ちを犯しそうだということも示唆されている。

 

最後に三通目の手紙だ。

「私たちは、こうして私たちの肉体と霊魂を罰せねば、犯した罪の報償が出来ないのです。この離れ島の中で、私たち二人が犯した、それはそれは恐ろしいの悖戻の報責なのです。」

とあるように、二通目の手紙で示唆されていたことが起こったということがわかる。

もちろん『瓶詰地獄』を最初に読んだときは、三通目が一番最初にくるので、「罪」がどういったものかわからない。

だが最後まで読むとその意味もわかるというものだ。

また、アヤ子がここまで自分たちのことを責めるのも、アヤ子が学んだことは聖書に書かれていたことだけであるからだ。

アヤ子にとって聖書は絶対のものであり、そこに書かれていることを守れないということは、絶対が崩れ去るのだ。

そのため、最後に身を投げるという選択をしたのである。

おわりに

次回は誰の作品を書こうか……

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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