【特別編】『天気の子』あれこれ

お久しぶりです。

ナインです。

前回の更新からだいぶ間があいてしまいました。

申し訳ありません。

とくにケガや病気をしたというわけではありません。

純粋に忙しくて書く時間がとれませんでした、すいません……

 

そんな今回は、絶賛公開中の映画

 

『天気の子』

 

についてあれこれ書いていこうと思います。

みなさんはもうご覧になりましたか?

賛否両論あると思いますが、私は面白いと感じました。

思いっきりネタバレしているので、お気を付けください。

あらすじ

「あの光の中に、行ってみたかった」

高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。

しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。

彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。

そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。

ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らすその少女・陽菜。

彼女には、不思議な能力があった。

(『天気の子』公式サイトより引用)

感想・考察

新海誠監督は、『秒速五センチメートル』や『君の名は。』といった作品において、美麗なアートワークによって支えられた象徴描写を通して、鑑賞者に情緒的な映像体験をもたらしてきた。今回の『天気の子』も、その優れた「ルック」は健在である。したがって、純粋にストーリーを追うだけでも、観客はその映像的な質の高さをもって作品を十分に楽しむ事ができる。しかし、それでは従来の作品群への称賛をなぞるだけになってしまう。そのため、従来の作品群とは一線を画す『天気の子』に見受けられる新海作品の進化を紐解いていきたい。

 

 『天気の子』が従来の新海作品と異なるのは、テーマ解釈の多様性であると考える。新海誠監督は、優れた象徴描写の中にキャラクターの心理を落とし込んできたが、今回はその部分的な象徴描写が連鎖していくつかのテーマを構築しているように感じられた。したがって、作品をより深く体験するための情緒的労力を、今までよりもさらに視聴者に要求しているように思われる。そして、これが作品への賛否が今までの作品よりも明確に二極化してしまう一つの要因であろう。テーマ解釈が多様化したことによって、受け手はより深部まで作品を楽しむことができるようになったといえるが、同時により労力を割くことになった。この部分に否がある方が多いのではないだろうか。これは多様化におけるある種の弊害ともいえる。

 

 『君の名は。』と『天気の子』には、シャーマニズムが強く見受けられる。『君の名は。』憑依型(トレース)、『天気の子』は脱魂型(エクスタシー)と、とらえることができる。それぞれの物語は「結び」そして「解放」へと収束していく。このように、『天気の子』は過去の作品と対比することができるが、本質的なテーマの解釈は『天気の子』において独立しているように思われる。

 

 『天気の子』をより深く体験するための補助線となる象徴描写は二種類存在する。そして、そのどちらにおいても、象徴の主体はヒロインの陽菜である。

 

 第一に、日本の象徴としての役割である。日本の象徴とは、すなわち天皇制のことだ。『天気の子』は2019年7月の公開となった。2019年には改元が行われ、令和という年号に変わり、7月には参議院議員選挙が行われた。この過渡期に争点となった問題の一つに、女性天皇及び女系天皇問題がある。ここでそれらの問題への言及はしないが、前述したようにヒロインの少女にシャーマニズムを担わせるという事に、現代におけるシャーマニズムの継承者としての天皇家の在り方が喚起される。また、ストーリー終盤に雲の上で主人公とヒロインが巡り会う印象的なシーンがある。作中で、雲の上は彼岸だということも明示されており、彼岸とはつまりあの世のことである。そしてこの構図は呪術的逃走譚としてのイザナミの黄泉下りを彷彿とさせる。さらに、その逃走譚を導いた存在が夏美、圭介、凪の三名である。この三名を「三枚の御札」ととらえるならば、この黄泉下りの構図が説得力を増すだろう。このように、日本神話と縁の深い天皇家とセレモニーを担う陽菜の存在を重ね合わせる事で、観客は女性天皇の是非を推察する事が出来るのである。

 

第二に、新海監督自身の投影である。『天気の子』における最も具体的な象徴描写は、「魚」と雲の上への脱魂である。作中で降雨が具体的な魚を象っていた。「魚」は古今の描写において、しばしば「言葉」の象徴とされる。そして、その「言葉」が全身を取り巻いて少女が雲の上に脱魂するという構図は、『君の名は。』の大ヒットによって意図せず雲の上の存在となり、さまざまな空間において「言葉」を浴びせられる事となった新海監督自身を喚起させる。そして、その少女が代償を伴いながらも他者のためにわずかな晴れ間を生み出す姿は、葛藤と戦いながらも2時間というわずかな祝福を映画という形で創り出すアニメーターに酷似している。

 

 これらの構図を補助線にして『天気の子』を観ることで、観客はより深く情緒的な映像を体験できる。いずれの構図においても、「東京を水没させるような災禍につながるとしても自分のために祈れ」というメッセージ、そしてそのメッセージを受けても「他者のために祈ることをやめない」あるいは利己と利他を統合する少女の横顔は、狂った天気、狂った社会への少しの希望をあらわしているのだろう。

おわりに

これを読んでみなさんの『天気の子』へのイメージはどう変わったでしょうか。

ストーリーをなぞっていくだけ、描写を眺めるだけ、音楽をきくだけ。

それだけでも十分に楽しめる作品だと思いますが、もっと先まで考えたら、より楽しむことができると思います。

もうひとつ、上では書いていないのですが、『天気の子』では主人公が色々と法に触れるようなことをします。

もちろん犯罪を推奨しているわけではないのですが、新海誠監督がなぜそんな描写を入れたのか考えると、等身大の男子高校生を表現しているのではないかと思います。

思春期真っただ中、多感な男子高校生が、大切なもののために自分を顧みずに行動する。

これ以上ないと思えるくらいにうまい表現方法だと私は思いました。

もうひとつ、「逃避」というテーマについて。

『天気の子』ではいたるところに「逃避」を想起させるような描写がでてきます。

上で書いたように、「黄泉下り」や「三枚の御札」はもちろん、主人公の「家出」や警察や児童相談所からの「逃走」も「逃避」といえます。

そしてなにより、メイン楽曲の一つでもある「グランドエスケープ」もまさにタイトルから「逃避」を表現しているといえます。

「逃避」というテーマがもつ意味を考えるのも楽しみ方の一つでしょう。

最後に、作中に登場した「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読んでみるのもいいと思います。

当然ですが、ところどころ『天気の子』に通ずる箇所があり、この作品を読むことによってより深く『天気の子』を楽しむことができると思います。

それを抜きにしても純粋に名著です。

そして「家出少年のバイブル」でもあります。

以上終わりです。

 

上にも書いたように、『天気の子』には多様な解釈の仕方があると思います。

私が書いたことが全てではないので、みなさんも自分なりの解釈の仕方をしてください。

 

次回の更新は未定です。

またお待たせしてしまったらすいません…… 

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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【特別編】語の誤用を考える4

お久しぶりです。

ナインです。

最近めっきり暑くなりましたね。

夜もだんだんと暑くなってきました。

もうすぐで夏がくる、という感じがします。

さて今回も特別編をお送りいたします。

今回は少し趣向を変えて、難読漢字を紹介していきたいと思います。

クイズ感覚で読んでみてください。

今回は海の生き物です。

 

 

 

海豹

海胆

栄螺

海鼠

水母

旗魚

細魚

柳葉魚

蝦蛄

寄居虫

翻車魚

胡麻斑海豹

砂滑

儒艮

海象

公魚

菟葵

胡獱

膃肭臍

 

 

 

 

 

 

答え

上から順に

アザラシ

ウニ

サザエ

ナマコ

クラゲ

ハタハタ

カジキ

サヨリ

シシャモ

シャコ

ヤドカリ

マンボウ

ゴマフアザラシ

スナメリ

ジュゴン

セイウチ

ワカサギ

イソギンチャク

トド

オットセイ

でした。

 

おわりに

どれくらい読めたでしょうか?

私は書きは苦手なのですが、読みはある程度できるつもりです。

中には漢検1級レベルの問題もあったので、全て読めた人は、読みは漢検1級レベルかもしれませんよ。

今回は海の生き物だったので、もし次回があれば違うシリーズにしようと思います。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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【特別編】語の誤用を考える3

お久しぶりです。

ナインです。

元号が変わって令和になりましたね。

令和でもよろしくお願いします。

前置きはこれくらいとして、令和初更新は特別編といたします。

みなさん関心があるのか、特別編は他の記事よりもpvが多いです。

今回は読み間違いが多い漢字を紹介していこうと思います。

普段何気なく読んでいるあの漢字、実は読み間違えているかもしれませんよ。

 

代替

読み間違いと考えて最初に思いついたのがこれ。

「他のもので代えること」という意味です。

携帯電話を修理に出したときに代わりに渡されるものを「代替機」といいますよね。

「だいがえ」ではありません。

「だいたい」が正しい読み方です。

 

続柄

実は結構読み間違いが多かったりするこの漢字。

「親族としての関係」という意味で使われる言葉です。

住民票をとる時などに目にすることが多いのではないでしょうか?

「ぞくがら」は間違いとは言い切れませんが、そう読むのはやめておきましょう。

正しくは「つづきがら」と読みます。

 

依存心

「人にたよる気持ち」という意味の言葉です。

「いぞんしん」ではありません。

「いそんしん」と読みましょう。

依存が「いぞん」と読まれるために、こう読まれるようになったのだと思います。

ただ依存も「いそん」と読むのが正しかったりするので、このことを知っておけば読み間違えも減るのではないでしょうか。

 

漸く

「長い間待ち望んでいた事態が遂に実現するさま」という意味の言葉です。

「しばらく」と読み間違えられることが度々あるのですが、正しくは「ようやく」です。

「暫く(しばらく)」と少しだけ漢字が似ているために読み間違えられるようになったのでしょうか?

意味を知っていれば間違うことはないでしょう。

 

早急

「非常に急なこと」という意味の言葉です。

正しくは「さっきゅう」と読むのですが、「そうきゅう」でも間違いではありません。

しかし本来は「さっきゅう」と読むので、できるかぎり「さっきゅう」と読むようにしましょう。

 

間髪

本来間髪という言葉は存在しません。

「髪の入る隙間もないほど、間を開けずに」という意味の「間、髪を容れず」から、間と髪を誤って一語としたのでしょう。

「間(かん)、髪(はつ)を容れず」という読み方が正しいので、間髪は「かんぱつ」ではなく「かんはつ」と読みます。

そもそも間髪という言葉を使わないのが正しいので、読み間違え以前の問題と言えるでしょう。

 

巣窟

「①居住する場所。②悪党のすみか」という意味で使われる言葉です。

「すくつ」と読みたい気持ちもわかりますが、間違った読み方です。

「そうくつ」と読むのが正しいので、間違えないようにしましょう。

 

訃報

「死去したという知らせ」という意味のことばです。

ネットやテレビで目にする機会もあると思います。

「とほう」と読んでしまうのもわからなくはありません。

訃が計という字と少し似ているため、「けいほう」と読み間違えられる場合もあるようです。

正しくは「ふほう」と読むので、間違えないように注意しましょう。

 

廉価

「値段が安いこと」を意味する言葉です。

「◯◯という商品の廉価版が出たよ」なんていう会話を一度くらい耳にしたことはあるのではないでしょうか?

廉価は「れんか」と読みます。

兼と似ているため、間違えて「けんか」と読まないようにしましょう。

 

汎用

「広くいろいろな方面に用いること」という意味の言葉です。

「汎用人型決戦兵器」なんて聞いたことはないでしょうか。

汎用は「はんよう」と読みます。

汎と凡が似ているため、「ぼんよう」と呼ばれているのをよく耳にします。

凡例も「ぼんれい」ではなく「はんれい」なので、間違えないように一緒に覚えておきましょう。

 

おわりに

久しぶりの更新ですが、みなさんおかわりないでしょうか?

次回もいつになるかわかりませんが、特別編をお送りしようと思っています。

それではまた次回お会いしましょう。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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【特別編】語の誤用を考える2

お久しぶりです。

ナインです。

新しい元号「令和」が発表されましたね。

典拠は万葉集とのことです。

平成も残り1ヶ月。

元気にいきましょう。

 

さて今回は、前回書いた「【特別編】語の誤用を考える」のパート2です。

今回は語だけでなく、間違った日本語も紹介していきたいと思います。

 

ら抜き言葉

私が普段一番気にする言葉です。

「見れる」「起きれる」「寝れる」「食べれる」などがあたります。

これらは「見られる」「起きられる」「寝られる」「食べられる」がそれぞれ正しい表現となります。

可能の助動詞「られる」を付けるのが本来の形なのですが、これは「乗る」「釣る」「登る」など五段活用の動詞から生じる下一段活用の可能動詞「乗れる」「釣れる」「登れる」などの影響によるものといわれています。

テレビでは芸能人の方が「ら」抜きで発言しても、テロップでは「ら」を入れた言葉が表示されています。

間違った表現なので正しく使うようにしましょう。

 

重言(二重表現)

「頭痛が痛い」「炎天下の下」「違和感を感じる」など、同じ意味の語を重ねる表現です。

特に違和感を感じるはよく見かけます。

「かん」と二回口にするのに違和感を覚えないでしょうか?

字に直しても二回「感」と書くので、どこか思うところがあるのではないかと考えます。

これらは気をつけていれば正せる表現だと思うので、普段から気をつけるようにしましょう。

 

文頭なので

題通り、文を「なので」で始めることです。

「私は昨日寝ていない。なので今から寝る。」

例にあげた「なので」の使い方はよく見かけますが、間違いです。

本来「なので」は断定の助動詞「だ」の連体形「な」と、理由や原因を表す接続助詞「ので」
によって構成されるため、他の言葉と結びつく言葉なのです。

ですから、文頭に「なので」を用いて文章を始めるのは、文法的に間違いです。

ですので、ですから、したがって、などと場面に合わせた言葉で言い換えるようにしましょう。

 

(レジにてお金を)お預かりいたします

コンビニなどでアルバイトをして、レジをしたという経験がある人も少なくないと思います。

お客さんからお金を受け取るときに、◯◯円お預かりいたしますと言って受け取ることもあると思います。

しかしなんでもかんでもお預かりするのは間違いです。

預かるということは、返すものがあるということです。

お釣りがある場合はお釣りを返せば良いのですが、お釣りがないのに預かるというのはおかしな表現です。

お釣りがある場合にお預かりしますと使うようにし、お釣りがない場合は丁度いただきますと使うようにしましょう。

 

うる覚え

ぼんやりとしか覚えてない時などに使うと思いますが、正しくは「うろ覚え」です。

語感や字面が似ているので注意しましょう。

 

うる覚えは正確には誤用ではなく誤表記ですので、今回のテーマとは少し違うかもしれません

 

代替

誤用というわけではないのですが、「だいがえ」と読んでいるのをたまに耳にします。

正しくは「だいたい」ですので、注意しましょう。

 

乳離れ

これも間違って読まれている漢字です。

「ちちばなれ」ではなく「ちばなれ」と読みます。

乳飲み子も「ちのみご」と読むので、一緒に覚えておきましょう。

 

爆笑

『大勢が大声でどっと笑うこと。「ギャグに—する」』

大笑いした時に使うことがあると思いますが、それが大勢でないなら爆笑とはいいません。

素直に大笑いといっておきましょう。

 

複雑骨折

『骨および周囲の軟部組織に重大な損傷を伴う骨折で、特に皮膚の外に骨折端が露出する場合をいう。』

複雑骨折と聞くと、骨がバラバラになったなどで複雑に骨折したのかと思いがちですが、正しくは骨折部が露出している状態のことをいいます。

どちらにせよ、そんなことにはなりたくないものですけどね。

 

潮時

『物事を始めたり終えたりするのにちょうどよい時。「—を見計らう」』

ものごとの終りを示す言葉として使われることがありますが、間違いです。

正しくはちょうどうよい時を表します。

ちょうどよく物事が終わる時に使うのであれば、誤用ではありません。

 

おわりに

前回書いたとおり、今回は語の誤用と間違った日本語、読み間違える漢字を紹介しました。

正しい日本語を知って、どんどん使っていってほしいです。

 

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【特別編】語の誤用を考える

お久しぶりです。

ナインです。

今回は少し趣向を変えて、特別編といたします。

題して「誤用が多い日本語」です。

友人と会話している時や、SNSを利用しているときなど、よく間違われて使われている言葉があると感じます。

私としてはやはり言葉は正しく使ってほしいので、今回特別編という形で少しでも誤用がなくなってほしいなと思い、この企画を思いつきました。

それでは早速紹介していきましょう。

 

役不足

『①俳優などが、自分に割り当てられた役に対して不満を抱くこと。

②その人の力量に比べて、役目が軽すぎること。

「—の感がある」

▶︎誤って、力不足の意に用いることがある。』

 

まずはこれです。

最近では正しい意味が広がっている気がしますが、やはり誤用も多いです。

役者の力不足を表す言葉として「役者不足」と用いられているのを偶に見かけますが、「役者不足」という言葉は存在しません。

例え使われていても、役者の数が不足しているのかな? と思ってしまいます。

役不足」は正しい意味で使い、「役者不足」は使わないようにしましょう。

 

破天荒

『今まで誰もしなかったことをすること。未曾有。前代未聞。「—の大事業」』

 

これは誤用が多い気がします。

寧ろ誤用しか見かけません。

豪胆で気概にあふれている、型破りといった意味で使われていますが、誤用です。

気をつけて使いましょう。

 

徐に

『落ち着いてことを始めるさま。しずかに。ゆるやかに。おもぶるに。「—口を開く」』

 

突然、急になどの意味で用いられることが多いです。

しかしゆっくりとという意味が正しいので注意しましょう。

「徐行」の意味を考えたら分かりやすいのではないかなと思います。

 

(話の)さわり

義太夫節の中に他の音曲の旋律を取り入れた箇所。曲中で目立つ箇所になる。

転じて、邦楽の各曲中での最大の聞かせ所。「くどき」の部分を指すことが多い。

さらに転じて、一般的に話や物語などの要点、または、最も興味を引く部分。「—だけ聞かせる」』

 

「さわり」も誤用が多い語です。

話の最初の部分という意味で用いられることが多いですが、実際は話の要点を示す語になります。

「物語のさわりの部分だけ教えて」という時にネタバレを食らう場合があるので、注意して使いましょう。

 

敷居が高い

『不義理または面目ないことなどがあって、その人の家に行きにくい。敷居がまたげない。』

 

「敷居が高い」も誤用が多いです。

上品すぎて加わりにくい、ハードルが高いといった意味で誤用されます。

「あそこ行くの敷居が高いわー」なんて聞くと、この人は何か不義理なことでもしたのかな? と思ってしまいます。

ハードルが高いといった語を用いましょう。

 

すべからく

『なすべきこととして。当然。大鏡序「—神武天皇をはじめ奉りて」』

 

全体的、すべてという意味で誤用されますが、当然〜べきという意味で使います。

すべからくは須くと書きます。

必須という意味と一緒に覚えてしまうのがいいでしょう。

 

憮然

『①失望してぼんやりするさま。失望や不満でむなしくやりきれない思いでいるさま。「—として立ちつくす」

②あやしみ驚くさま。』

 

腹を立てているさまや不満があるさまとして誤用されます。

正しくは失望して呆れることを指します。

とはいうものの、「憮然」という言葉自体あまり使われているのを見ません。

ただ使う際は間違えないように注意しましょう。

 

姑息

『(「姑」はしばらくの意)一時のまにあわせ。その場のがれ。「—な手段」』

 

よく見る誤用される語です。

卑怯という意味で使われますが、正しくはその場しのぎのという意味です。

卑怯な手を使ってその場をしのいだ場合、一応正しい使い方ではあると思います。

間違えないように注意しましょう。

 

閑話休題

『(話を本筋にもどす時に用いる語)無駄話はさておいて。それはさておき。さて。』

 

小説を読んでいるとよく見かけるフレーズです。

本筋とは関係ない時に使うのが正しい使い方なのですが、最近本筋から逸れるときに使われる逆の意味で使っているのを見かけます。

逆の意味で使わないように注意しましょう。

 

気が(気の)置けない

『気詰まりでない。気づかいしなくてよい。

▶︎近年誤って、気を許せない、油断できないの意で用いることがある。』

 

今回最後の紹介です。

言葉の意味をしっかりと考えれば、気をおかなくてよいという意味ですから、気づかいがいらないという意味で捉えられると思います。

語によっては文字から意味を捉えることのできるものもあるので、しっかりと考えてから使いましょう。

 

おわりに

今回初めての試みでしたが、いかがでしたでしょうか?

やはり日本語は正しく使ってほしいと思っています。

今回は語の誤用を紹介しましたが、間違った日本語の使い方なども紹介していきたいと思っています。

二回、三回と更新していき、少しでも皆さんが正しい日本語を使ってくれるようになればと思っています。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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理知

こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

Kの昇天

 

です。

梶井基次郎の作品です。

檸檬』『櫻の樹の下には』『愛撫』に続いて4つめとなります。

梶井の作品は数が少なく、どれも短いので、全部合わせても薄い文庫本一冊に収まってしまいます。

いずれ全てについて書けたらなと思います。

あらすじ
 お手紙によりますと、あなたはK君の溺死について、それが過失だったろうか、自殺だったろうか、自殺ならば、それが何に原因しているのだろう、あるいは不治の病をはかなんで死んだのではなかろうかと様さまに思い悩んでいられるようであります。そしてわずか一ひと月ほどの間に、あの療養地のN海岸で偶然にも、K君と相識ったというような、一面識もない私にお手紙をくださるようになったのだと思います。私はあなたのお手紙ではじめてK君の彼地での溺死を知ったのです。私はたいそうおどろきました。と同時に「K君はとうとう月世界へ行った」と思ったのです。どうして私がそんな奇異なことを思ったか、それを私は今ここでお話しようと思っています。それはあるいはK君の死の謎を解く一つの鍵であるかも知れないと思うからです——。

感想
 梶井の作品には詩的なものが多いというのは、梶井の作品をいくつか読めばすぐにわかるだろう。

短いながらもいずれも綺麗な作品たちだ。

しかし詩的だからというべきか、あまり小説っぽくないように私は思う。

以前私が書いた、芥川の作品の中でも一番だとさえ思っている『蜜柑』は、梶井の作品と同じように短く、そして綺麗だ。

しかし詩的ではなく、ストーリーがあり、完全に小説だ。

ここが梶井との違いだろう。

そんな梶井だが、今回の『Kの昇天』は他の作品と比べるとストーリーがあり、小説寄りな作品だ。

 

もうひとつ『Kの昇天』では、梶井の特徴の一つである理知性が表されている。

梶井が描く作品は幻想的なテーマが多い。

Kの昇天』では月に昇天というテーマが扱われている。

しかし一見荒唐無稽だと思えるようなテーマにもしっかりと理論があり、理詰めされている。

こういったところが梶井の良さといえるのでないだろうか。

おわりに
 今回はあまり間を空けずに更新できました。

今後もなるべく早いペースで更新できたらいいなと思っています。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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象徴

こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

『黒猫』

 

です。

以前にも書いた江戸川乱歩の名前の由来となった作家です。

ポーは世界初の推理小説と言われる『モルグ街の殺人』などを書いています。

さて今回は『黒猫』というタイトル通り、黒猫が出てきます。

黒猫と聞くとあまり良くないイメージがパッと浮かんでくるという方もいるのではないでしょうか?

でも『黒猫』ではそんなことなくて、とても可愛いらしくえがかれています。

ネタバレはしていません。

あらすじ
 私がこれから書こうとしているきわめて奇怪な、またきわめて素朴な物語については、自分はそれを信じてもらえるとも思わないし、そう願いもしない。自分の感覚でさえが自分の経験したことを信じないような場合に、他人に信じてもらおうなどと期待するのは、ほんとに正気の沙汰とは言えないと思う。だが、私は正気を失っている訳ではなく、――また決して夢みているのでもない。しかしあす私は死ぬべき身だ。で、今日のうちに自分の魂の重荷をおろしておきたいのだ。私の第一の目的は、一連の単なる家庭の出来事を、はっきりと、簡潔に、注釈ぬきで、世の人々に示すことである。それらの出来事は、その結果として、私を恐れさせ――苦しめ――そして破滅させた。だが私はそれをくどくどと説明しようとは思わない。私にはそれはただもう恐怖だけを感じさせた。――多くの人々には恐ろしいというよりも怪奇なものに見えるであろう。今後、あるいは、誰か知者があらわれてきて、私の幻想を単なる平凡なことにしてしまうかもしれぬ。――誰か私などよりももっと冷静な、もっと論理的な、もっとずっと興奮しやすくない知性人が、私が畏怖をもって述べる事がらのなかに、ごく自然な原因結果の普通の連続以上のものを認めないようになるであろう。

感想

ハッキリいうと『黒猫』という作品を、作品単体として見たとき、私はそこまで高い評価を下せない。

もちろん面白いことはまったくその通りなのだが、メチャクチャ面白いかといわれると、否であろう。
 しかし『黒猫』は世間的に評価が高い作品である。

たしかにそうかもしれない。

こういうと先程の私の発言とは矛盾すると思うが、先程の私の発言はあくまで作品単体としての評価である。

今でこそ珍しくもなんともないような内容、オチであるが、この作品が書かれた時代を考えると、当時としては相当に真新しい作品だったはずだ。

『黒猫』が書かれた当時は推理小説がこの世に産まれたばかりの時代だ。

そんな時代であるからこそ、『黒猫』のような作品は数が少なかったのだ。

そんな中で世に出されたこの作品は高い評価を得ることとなったわけである。

 

そんな背景を考えながら読み進めていくと、また違った面白さが見えてくるのではないだろうか。

おわりに
 思ったように時間がとれず、前回の更新から少し間が空いてしまいました。

次回はなるべく早く更新できるように努めます。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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