ザ・メルヘンストーリー


こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

『パノラマ島奇譚』

 

です。

遂に江戸川乱歩シリーズ第10弾です。

今回で江戸川乱歩シリーズはラストとなる予定です。

そんな最後を飾るのは、『パノラマ島奇譚』です。

実写化不可能とまで言われた作品で、情景描写に驚くこと間違いなしの作品だと思います。

一応ドラマがあるのですが、こちらの賛否はわかれているみたいです。

ネタバレありで書きますので、お気をつけください。

あらすじ

 同じM県に住んでいる人でも、多くは気づかないでいるかも知れません。I湾が太平洋へ出ようとする、S郡の南端に、外の島々から飛び離れて、丁度緑色の饅頭をふせた様な、直径二里足らずの小島が浮んでいるのです。今では無人島にも等しく、附近の漁師共が時々気まぐれに上陸して見る位で、殆ど顧る者もありません。殊にそれは、ある岬の突端(とっぱな)の荒海に孤立していて、余程の凪ででもなければ、小さな漁船などでは第一近づくのも危険ですし、又危険を冒してまで近づく程の場所でもないのです。所の人は俗に沖の島と呼んでいますが、いつの頃からか、島全体が、M県随一の富豪であるT市の菰田(こもだ)家の所有になっていて、以前は同家に属する漁師達の内、物好きな連中が小屋を建てて住まったり、網干し場、物置きなどに使っていたこともあるのですが、数年以前それがすっかり、取払われ、俄(にわか)にその島の上に不思議な作業が始ったのです。何十人という人夫土工或(あるい)は庭師などの群が、別仕立てのモーター船に乗って、日毎に島の上に集って来ました。どこから持って来るのか、様々の形をした巨岩や、樹木や、鉄骨や、木材や、数知れぬセメント樽などが、島へ島へと運ばれました。そして、人里離れた荒海の上に、目的の知れぬ土木事業とも、庭作りともつかぬ工作が始まったのです――。

感想

読了した時の私の感想は「壮大なメルヘン物語」といったところだ。

話そのものももちろん面白いのだが、特筆すべき点はやはり乱歩によるパノラマ島の描写だ。

読んだ方はわかるだろうが、人見廣介が焦がれた桃源郷が細部に至るまで描かれている。

私がだらだらと語るような内容ではないであろう。

読んでもらえればその凄さがわかると思う。

 

最後の場面についてだが、私はあれはなくてもよかったのではないかと思っている。

話が広がり、なんとか終わらせるためにあの場面を入れた気がするからだ。

しかし人見廣介の最後の瞬間はいかにも乱歩らしい結末なのではないかと思う。

花火になって打ちあがるなどと突飛な発想がでてくるのはさすがだと思う。

メルヘンだけでなく、最後にしっかりと狂気と美を入れてくるあたりはすっかりどこかへいっていた乱歩作品なのだということを思い起こさせる。

あっさりと終わらせるのもどうかと思うが、ラストは乱歩らしさがでており、思わずうなってしまう。

あくまで私の個人的な意見なので、そうなのか程度に考えてもらってかまわない。

おわりに

今回で江戸川乱歩シリーズは一応の終わりになります。

芥川龍之介シリーズもそうなのですが、番外編などと称してしれっと新しく書くかもしれません。

次回からの予定ですが、しばらくシリーズものは書かずに、作家はバラバラで書こうと思います。

あくまで予定ですので、いきなり〇〇シリーズとか書くかもしれません。 

これからもどうぞよろしくお願いします。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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