モヤモヤ


こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

『影を踏まれた女』

 

です。

前回書いた通り、今回も岡本綺堂の作品です。

岡本は『半七捕物帳』が有名ですが、私は怪談もオススメしたいです。

岡本の怪談はあのなんとも言えない感じが癖になります。

きっと読まないとわかりません。

一度でいいので是非読んでみてください。

少しネタバレしているかもしれないので、お気をつけください。

あらすじ

 Y君は語る。

 先刻も十三夜のお話が出たが、わたしも十三夜に縁のある不思議な話を知っている。それは影を踏まれたということである。

 影を踏むという子供遊びは今は流行らない。今どきの子供はそんな詰まらない遊びをしないのである。月のよい夜ならばいつでも好さそうなものであるが、これは秋の夜にかぎられているようであった。秋の月があざやかに冴え渡って、地に敷く夜露が白く光っている宵々に、町の子供たちは往来に出て、こんな唄を歌いはやしながら、地にうつるかれらの影を踏むのである。

 ――影や道陸神、十三夜のぼた餅――
 ある者は自分の影を踏もうとして駈けまわるが、大抵は他人の影を踏もうとして追いまわすのである。相手は踏まれまいとして逃げまわりながら、隙をみて巧みに敵の影を踏もうとする。また横合いから飛び出して行って、どちらかの影を踏もうとするのもある。こうして三人五人、多いときには十人以上も入りみだれて、地に落つる各自の影を追うのである。もちろん、すべって転ぶのもある。下駄や草履の鼻緒を踏み切るのもある。この遊びはいつの頃から始まったのか知らないが、とにかく江戸時代を経て明治の初年、わたし達の子どもの頃まで行なわれて、日清戦争の頃にはもう廃ってしまったらしい——。

感想
 岡本の怪談は何故何が説明されない、読了後のモヤモヤ感こそが本質なのではないだろうか。

きっとこのモヤモヤが背筋をゾクッとさせる恐怖の正体だろう。

古来より人間は得体の知れないものには恐怖してきた。

正体がわからないというのはそれだけで怖いものだ。

正体や仕組みがわかればどうってことないものでも、やはりわからなければ怖い。

故にわからない状態というのは危険なのだ。

閑話休題

岡本の書く怪談の殆どが特に詳しい説明もないままに終わる。

前回書いた『鯉』も呪いかどうかは結局わからなかった。

それが岡本怪談の本質といってしまえばその通りなのだが、やはりモヤモヤが残る。

しかしこのモヤモヤがたまらないと感じさせるのが岡本怪談の良い(?)ところなのだろう。

読了後のなんとも言えない不完全燃焼感を味わいたい方にオススメできるのではないだろうか。

おわりに
 年内に更新するのは今回で最後だと思います。

次回の更新は新年の挨拶と共に1月の上旬頃の予定です。

来年もどうぞご贔屓ください。

それでは皆様良いお年を。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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