悪魔的


こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

『悪魔の舌』

 

です。

村山槐多の作品です。

村山は僅か22歳で夭折しました。

死に際に「白いコスモス」「飛行船の物憂き光」という謎めいた言葉を残したそうです。

他には画家としても有名です。

 

ネタバレすると面白くなくなってしまうので、ネタバレなしです。

あらすじ

   (一)

 

 五月始めの或晴れた夜であつた。十一時頃自分は庭園で青い深い天空に見入つて居ると突然門外に当つて『電報です。』と云ふ声がする。受取つて見ると次の数句が記されてあつた、『クダンサカ三〇一カネコ』『是は何だらう。三〇一と云ふのは。』実に妙に感じた。金子と云ふのは友人の名でしかも友人中でも最も奇異な人物の名であるのだ。『彼奴は詩人だから又何かの謎かな。』自分は此不思議な電報紙を手にして考へ始めた。発信時刻は十時四十五分、発信局は大塚である。どう考へても解らない。が兎に角九段坂まで行つて見る事にし着物を着更へて門を出た。

 吾住居から電車線路までは可成りある。その道々自分はつくづくと金子の事を考へた。丁度二年前の秋、自分は奇人ばかりで出来て居る或宴会へ招待された際、彼金子鋭吉と始めて知合になつたのであつた。彼は今年二十七歳だから其時は二十五歳の青年詩人であつたが、其風貌は著るしく老けて見え、その異様に赤つぽい面上には数条の深い頽廃した皺が走つて居、眼は大きく青く光り、鼻は高く太かつた。殊に自分が彼と知己になるに至つた理由は其唇にあつた。宴会は病的な人物ばかりを以て催された物であつたから、何れの来会者を見ても、異様な感じを人に与へる代物ばかりで、知らない人が見たら悪魔の集会の如く見えたのであるが、其中でも殊に此青年詩人の唇が自分には眼に着いた――。

感想

どこか乱歩を彷彿とさせる雰囲気がある。

それもそのはず、乱歩は村山の影響をうけているからだ。

そして村山の文章だが、こちらも読みやすい。

描写が具体的になされており、場面の想像が容易であるのだ。

そしておどろおどろしさも文章の端々からにじみ出ている。

形式はこういったジャンルにはよくあるものだが、王道というべきだろうか、外れがない。

ただ、若干読み手を選ぶかもしれない。

乱歩を彷彿と書いたが、村山の作品は乱歩の作品と比べると、少々過激だ。

『悪魔の舌』を読んだあとに、乱歩の作品を読むと、その差が顕著にわかるのではないだろうか。

 

『悪魔の舌』の感想を書くとほとんどがネタバレになりそうである。

あらすじを読んでもらえるとわかると思うが、最初はミステリー然とした流れになっている。

しかしそう思って読み進めていくと、途中でどこかおかしいことに気がつくだろう。

読んでいて嫌悪感がないのであれば是非最後まで読んでほしい。

きっと思わず唸ってしまうだろうから。

おわりに

夭折した洋画家で作家の村山槐多の作品『悪魔の舌』の紹介でした。

これはホラーに分類されるのかな?

それともミステリー?

どちらでもいいですが、怪奇譚にかわりはないでしょう。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

悪魔の舌 (青空文庫POD(ポケット版))
村山槐多
青空文庫POD (2016-07-31)
売り上げランキング: 1,732,373