裏を


こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

『ある探偵事件』

 

です。

寺田寅彦の作品です。

寺田の作品について書くのは2回目です。

前回は『化学者とあたま』について書きました。

今回は少し風変わりな作品だと思います。

『ある探偵事件』も短いので、是非ご一読ください。

ネタバレしています。

お気をつけください。

あらすじ
 数年前に「ボーヤ」と名づけた白毛の雄猫が病死してから以来しばらくわが家の縁側に猫というものの姿を見ない月日が流れた。先年、犬養内閣が成立したとおなじ日に一羽のローラーカナリヤが迷い込んで来たのを捕えて飼っているうち、ある朝ちょっとの不注意で逃がしてしまった。そのおなじ日の夕方帰宅して見ると茶の間の真中に一匹の真白な小猫が坐り込んですましてお化粧をしていた。家人に聞いてみると、どこからともなく入り込んで来て、そうして、すっかりわがもの顔に家中を歩き廻っているそうである。それが不思議なことには死んだボーヤの小さい時とほとんどそっくりでただ尻尾が長くてその尻尾に雉毛の紋様があるだけの相違である。どこかの飼猫の子が捨てられたか迷って来たかであるに相違ないが、とにかくそのままに居着いてしまって「白」と命名された。珍しく鷹揚な猫で、ある日犬に追われて近所の家の塀と塀との間に遁げ込んだまま、一日そこにしゃがんでいたのを、やっと捜し出して連れて来たこともあった。スマラグド色の眼と石竹色の唇をもつこの雄猫の風貌にはどこかエキゾチックな趣がある——。

感想
 最初に言っておく。

私は何が探偵事件なのかわからなかった。

寺田は随筆の名手だが、この作品は少し話がわかりにくい。

加えて、科学者にしては仮設の検証が抜けている。

更に言うと、肝心の探偵が出てこない。

一つ一つが無関係な事を、偶然筋が通ったから無理矢理結びつけているような感覚になる。

なんというか日記の様な感じで、最後まで支離滅裂である。

しかし寺田はあえてこのように書くことで、少ない情報や根拠だけで結論を導きだすことへの不安を述べているのではないかと考えた。

昨今の社会でもデマやガセが流れ、詳しく調べもしないでバッシングするということが少なくないように思える。

簡単に加害者になるし、簡単に被害者にもなってしまうのだ。

こういった間違いが起こらないためにも、流れている情報や根拠だけで判断せずに、自分でしっかりと調べることが大切なのだと改めて気づかされる。

おわりに
 次は明後日の更新になると思います。

よろしくお願いします。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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