私的


こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

『縊死体』

 

です。

夢野久作の作品で、これで夢野の作品について書くのは4作目になります。

かれこれ4作目なので、もう少し数が増えたらシリーズ化しようと思います。

ネタバレしています。

お気をつけください。

あらすじ

 どこかの公園のベンチである。
 眼の前には一条の噴水が、夕暮の青空高く高くあがっては落ち、あがっては落ちしている。
 その噴水の音を聞きながら、私は二三枚の夕刊を拡げ散らしている。そうして、どの新聞を見ても、私が探している記事が見当らないことがわかると、私はニッタリと冷笑しながら、ゴシャゴシャに重ねて押し丸めた。
 私が探している記事というのは今から一箇月ばかり前、郊外の或る空家の中で、私に絞め殺された可哀相な下町娘の死体に関する報道であった。

 私は、その娘と深い恋仲になっていたものであるが、或る夕方のこと、その娘が私に会いに来た時の桃割れと振袖姿が、あんまり美し過ぎたので、私は息苦しさに堪えられなくなって、彼女を郊外の××踏切り附近の離れ家に連れ込んだ。そうして驚き怪しんでいる娘を、イキナリ一思いに絞め殺して、やっと重荷を卸したような気持ちになったものである。万一こうでもしなかったら、俺はキチガイになったかも知れないぞ……と思いながら……——。
感想

最初に思ったことは、絞殺体を縊死体に偽装するのは存外難しいのではないかということだ。

絞殺体は顔に血がいくため赤黒く鬱血し、溢血点も多々浮かぶ。

縊死体は顔に血がいかず、顔が蒼白する。

見る人が見たら絞殺体と縊死体の違いなど簡単に見分けるだろう。

そのため普通は偽装など成功しないだろう。

しかし今回は運が良かったのか、発見が遅れたことによって気がつかれなかったのではないかと考えた。

というよりも、そうでなければきっと偽装はバレていただろう。

 

もう一つ、男が娘を殺した理由が、江戸川乱歩の『白昼夢』と少し近いものを感じたということだ。

『白昼夢』については前にも書いたと思うが、男が自分の妻の好もしい姿を、永久に自分のものにしたいという理由で殺した。

『縊死体』では、娘があんまり美し過ぎたので、息苦しさに堪えられなくなって、殺した。

どちらにも常軌を逸した異常性がある。

異常性という点で、この二つの作品は近いものがあるのだ。

もちろん私の個人的な意見ではあるが。

 

短いながらも、これだけ内容が詰め込まれているのは見事と言える。

おわりに

次回の更新は明々後日の予定です。

お楽しみにお待ちください。


最後までお読みくださりありがとうございます。

夢野久作全集〈3〉 (ちくま文庫)
夢野 久作
筑摩書房
売り上げランキング: 531,723