綺麗キレイ
こんにちは。
ナインです。
本日も本の紹介です。
今回紹介する作品は
『昆虫図』
です。
久生十蘭の作品です。
久生はどちらかというと短編でこそ本領を発揮している気がします。
『昆虫図』も短編ですので是非ご一読ください。
少しずつ久生の作品について書いていけたらなと思います。
もしかしたらシリーズ化するかもしれません。
最後のオチについて書くことはありませんが、描写の言及はしているのでお気をつけください。
あらすじ
伴団六は、青木と同じく、大して才能のなさそうな貧乏画かきで、地続きの古ぼけたアトリエに、年増くさい女と二人で住んでいた。
青木がその裏へ越して以来の、極く最近のつきあいで、もと薬剤師だったというほか、くわしいことは一切知らなかった。
職人か寄席芸人かといったように髪を角刈にし、額を叩いたり眼を剥いて見せたり、ひとを小馬鹿にした、どうにも手に負えないようなところがあって、これが、最初、青木の興味をひいたのである。
細君のほうは、ひどく面長な、明治時代の女官のような時代おくれな顔をした、日蔭の花のような陰気くさい女で、蒼ざめたこめかみに紅梅色の頭痛膏を貼り、しょっちゅう額をおさえてうつ向いていた。吉原にいたことがあるという噂だった。
どういういきさつがあるのか、思い切って素っ気ない夫婦で、ときどき、夜半ごろになって、すさまじい団六の怒号がきこえてくるようなこともあったが、青木の前では、互いに猫撫で声でものを言い合っていた。
十一月のはじめ、青木は東北の旅から帰り、その足で団六のアトリエへ訪ねて行くと、団六はめずらしくせっせと仕事をしていた。
日本間のほうを見ると、いつもそこの机にうしろ向きになって、牡蠣のようにへばりついている細君の姿が見えないので、どうしたのかとたずねると、病気で郷里へ帰っているのだといって、細君の郷里の、船饅頭という船頭相手の売笑婦の生活を、卑しい口調で話しだした——。
感想
ここまで小説の内容について事細かにイメージできるような作品はそう多くないのではないだろうか。
そう思わせるほどに描写が鋭い。
私が特にそうだと思った部分が「紋白や薄羽や白い山蛾が、硝子天井から来る乏しい残陽に翅を光らせながら、幾百千となくチラチラ飛びちがっている。そこに坐っていると、吹雪の中にでもいるような奇妙な錯覚に襲われるのだった。」だ。
どんな場面か容易に想像できる。
想像してみると、こちらまで吹雪の中にでもいるような奇妙な錯覚に襲われそうになる。
他にも多々イメージが容易な場面がある。
おわりに
次回の更新は明日の予定です。
最後までお読みくださりありがとうございます。