創作物的な意味で


こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

『おおかみと七ひきのこどもやぎ』

 

です。

グリム童話シリーズ第3弾です。

このお話も有名なので、一度は絵本などで読んだことがある、という方も多いのではないでしょうか。

おおかみと七ひきのこどもやぎ

         一

 むかし、あるところに、おかあさんのやぎがいました。このおかあさんやぎには、かわいいこどもやぎが七ひきあって、それをかわいがることは、人間のおかあさんが、そのこどもをかわいがるのと、すこしもちがったところはありませんでした。

 ある日、おかあさんやぎは、こどもたちのたべものをとりに森まで出かけて行くので、七ひきのこどもやぎをよんで、こういいきかせました。

「おまえたちにいっておくがね、かあさんが森へ行ってくるあいだ、気をつけてよくおるすばんしてね、けっしておおかみをうちへ入れてはならないよ。あいつは、おまえたちのこらず、まるのまんま、それこそ皮も毛もあまさずたべてしまうのだよ。あのわるものは、わからせまいとして、ときどき、すがたをかえてやってくるけれど、なあに、声はしゃがれて、があがあごえだし、足はまっ黒だし、すぐと見わけはつくのだからね。」

 すると、こどもやぎは、声をそろえて、

「かあさん、だいじょうぶ、あたいたち、よく気をつけて、おるすばんしますから、心配しないで行っておいでなさい。」と、いいました。

 そこで、おかあさんやぎは、メエ、メエといって、安心して出かけて行きました。

         二

 やがて、まもなく、たれか、おもての戸をとんとんたたくものがありました。そうして、

「さあ、こどもたち、あけておくれ、おかあさんだよ。めいめいに、いいおみやげをもって来たのだよ。」と、よびました。

 でも、こどもやぎは、それがしゃがれた、があがあ声なので、すぐおおかみだということがわかりました。そこで、

「あけてやらない。おかあさんじゃないから。おかあさんは、きれいな、いい声してるけれど、おまえはしゃがれっ声のがあがあ声だもの。おまえはおおかみだい。」と、さけびました。

 そこで、おおかみは、荒物屋の店へ出かけて、大きな白ぼくを一本買って来て、それをたべて、声をよくしました。それからまたもどってきて、戸をたたいて、大きな声で、

「さあ、こどもたち、あけておくれ。おかあさんだよ、みんなにいいものをもって来たのだよ。」と、どなりました。

 でも、おおかみはまっ黒な前足を、窓のところにかけていたので、こやぎたちはそれをみつけて、

「あけてはやらない。うちのおかあさんは、おまえのようなまっ黒な足をしていない。おまえはおおかみだい。」と、さけびました。

 そこで、おおかみは、パン屋の店へ出かけて、

「けつまづいて足をいためたから、ねり粉をなすっておくれ。」と、いいました。

 で、パン屋が、おおかみの前足にねったこなをなすってやりますと、こんどは、粉屋へかけつけて行って、

「おい、前足に白いこなをふりかけてくれ。」と、いいました。

「おおかみのやつ、まただれかだますつもりだな。」

 そう粉屋はおもって、ぐずぐずしていました。

 するとおおかみは、

「すぐしないと、くっちまうぞ。」と、どなりました。

 そこで、粉屋はこわくなって、おおかみの前足を白くしてやりました。まあ、こういうところが、人間のだめなところですね。

 さて、わるものは、三どめに、やぎのおうちの戸口に立って、とんとん、戸をたたいて、こういいました。

「さあこどもたちや、あけておくれ、おかあさんがかえって来たのだよ、おまえたちめいめいに、森でいいものをみつけて来たのだよ。」

 子やぎたちは、声をそろえて、

「さきに足をおみせ、うちのおかあさんだかどうだか、みてやるから。」

 そういわれて、おおかみは、前足を窓にのせました。こどもやぎがそれを見ますと、白かったので、おおかみのいうことを、すっかりほんとうにして、戸をあけました。

 ところで、はいって来たのはたれでしたろう、おおかみだったではありませんか。

 みんな、わあっとおどろいて、ふるえあがって、てんでんにかくれ場所をさがして、かくれようとしました。ひとりは、つくえの下にとびこみました。次は寝床にはいこみました。三ばんめは、炉の中にかくれました。四ばんめは、台所へにげました。五ばんめは、棚にあがりました。六ばんめは、洗面だらいの下にもぐりました。七ばんめは、柱時計の箱のなかにかくれました。

 ところが、おおかみは、そばからみつけだして、ぞうさなく、ひとりひとり、かたはしからつかまえて、ただひと口に、あんぐりやってしまいました。ただ、大時計の箱のなかにかくれた、いちばん小さな子だけは、みつからずにすみました。さて、たらふくたべたいだけたべて、おなかがくちくなると、おおかみはおもてへにげ出して、木のかげになって、青あおとしているしばの上に、ながながとねそべって、ぐうぐういびきをかきだしました。

         三

 それから間もなく、おかあさんやぎは、森からかえって来ました。ところで、まあ、おかあさんやぎは、そのときなにを見たでしょう。おもての戸は、いっぱいにあけひろげてありました。テーブルも、いすも、腰かけも、ほうりだされていました。洗面だらいは、こなごなにこわれていました。夜着もまくらも、寝台からころげおちていました。

 おかあさんやぎは、こどもたちをさがしましたが、ひとりもみつかりません。ひとりひとり、名前をよんでも、たれも返事をするものがありません。おしまいに、いちばん下の子の名前まで来て、はじめて、ほそい声で、

「かあさん、あたい、時計のお箱にかくれているよ。」というのが、きこえました。

 おかあさんやぎは、この子をひっぱりだしてやりました。そこで、この子の口から、はじめておおかみが来て、ほかのこどもたちみんなたべてしまったことが、わかりました。そのとき、おかあさんやぎは、かわいそうな子やぎたちのことを、どんなに泣いてかなしんだか、みなさん、さっしてみてください。

 やっとのことで、おかあさんやぎは、泣くことをやめて、末っ子やぎといっしょに、そとへ出ました。原っぱまでくると、おおかみは、やはり木のかげにながながとねそべって、それこそ木の枝も葉も、ぶるぶるふるい動くほどの高いびきを立てていました。

 ところで、おかあさんやぎが、おおかみのようすを遠くからよく見ますと、そのふくれかえったおなかの中で、なにかもそもそ動いているのがわかりました。

「まあ、ありがたい、おおかみのやつ、うちのこどもたちを、お夕飯にして、うのみにのみこんだままだから、みんなきっとまだ生きているのだよ。」

 こうおもって、おかあさんやぎは、さっそく、うちへかけこんで行って、はさみと針と糸をとって来ました。それから、おかあさんやぎは、このばけもののどてっ腹を、ちょきんとはさみで、ひとはさみはさみました。するともうそこに、一ぴきのこどもやぎが、ぴょこんとあたまを出しました。おかあさんはよろこんで、またじょきじょきはさんで行きますと、ひとり出、ふたり出して、とうとう六ぴきのこどもやぎのこらずが、とびだしました。みんなぶじで、たれひとり、けがひとつしたものもありません。なにしろ、この大ばけものは、むやみとがつがつしていて、ただもう、ぐっく、ぐっく、そのまま、のどのおくへほうりこんでしまっていたからです。

 まあうれしいこと。こどもたちは、おかあさんやぎにしっかりだきつきました。それから、およめさんをもらう式の日の、仕立屋のように、ぴょんぴょんはねまわりました。

 でも、おかあさんやぎは、こどもたちをとめて、

「さあ、そこらで、みんな行って、ごろた石をひろっておいで、この罰あたりなけだものが寝ているうちに、おなかにつめてやるのだから。」といいました。

 そこで、こどもたちは、われがちにかけだして行って、えんやら、えんやら、ごろた石をあつめて、ひきずって来ました。そうして、それを、おおかみのおなかに、つまるだけつめこみました。すると、おかあさんやぎが、あとから、ちょっちょっと、手ばしこく、もとのようにぬいつけてしまいました。それがいかにも早かったので、おおかみがまるで気がつかないし、ごそりともしないまにすんでしまいました。

 おおかみは、やっとのこと、寝たいだけ寝て、立ちあがりました。なにしろ、胃袋のなかは石がいっぱいで、のどがからからにかわいてたまらないので、ふき井戸のところへ行って、水をのもうとしました。ところが、からだを動かしかけますと、おなかの中で、ごろた石がぶつかりあって、がらがら、ごろごろ、いいました。

がらがら、ごろごろ、なにがなる

そりゃどこでなる、腹でなる。

六ぴきこやぎのなくこえか、

こりゃ、そうじゃない、ごろた石、

 おおかみは、こううたいました。

 さて、やっとこすっとこ、ふき井戸の所まで来て、水の上にかがもうとすると、おなかの石のおもみに引かれて、おおかみは、のめりました。そうして、いやおうなしに、泣き泣きおおかみは、水の中におちこみました。

 遠くで見ていた七ひきのこどもやぎは、みんなかけよって来て、

「おおかみ死んだよ。おおかみ死んだよ。」とさけびながら、おかあさんやぎと手をつなぎながら、おおよろこびで、井戸のまわりをおどりまわりました。

おわりに

改めて読んでみると、けっこう残酷ですよね。

しかし子ヤギが一匹も死んでいないとは……

そうとう運がよかったのでしょうね。

若干ご都合主義な感じが否めないですが……

 

前回から間があいてしまいました。

更新頻度が落ちますが、これからもどうぞよろしくお願いします。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。