お待たせしました


こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

『若返り薬』

 

です。

 

さて今回は、夢野久作の作品です。

前にも一度だけ夢野の作品を紹介しましたね。

シリーズにするか迷っています。

この先夢野の作品について何作品も書くのであれば、その時は改めてシリーズにすることにします。

今回ネタバレありです。

あらすじ

 太郎さんはお父様から銀色にピカピカ光る空気銃を一梃頂きました。大喜びで毎日毎日雀を撃って歩きましたが、一匹も中りません。そのうちに弾丸が一発も無くなりました。

 お父様に弾丸を買って下さいとお願いしましたが、

「まだ店がお休みだから」

 と云って買って下さいません。雀は表でチュンチュン鳴いて、何だか太郎さんを馬鹿にしているようです。太郎さんは弾丸のない空気銃を抱いて涙ぐみました。

 そのうちに不図お祖父様の手箱の中に赤い丸薬があった事を思い出しました。ちょうどお祖父様は御年始に行かれた留守でしたから、そっとお室へ行って床の間の手箱をあけて丸薬の袋を盗み出しました。

 その袋の中には赤い丸薬がたった三粒ありました。空気銃に入れてみると丁度良い位の大きさです。

 太郎さんは大喜びで三粒の赤い丸薬を持って表に出て、屋根の上にいる雀を狙って一発放しましたが、中りませんでした。又一発――又一発――とうとう三粒共赤い丸薬を撃ちましたが、中りません。雀は知らぬ顔をしてチュンチュンと囀っています。

 太郎さんは急に丸薬が惜くなりました。もしやそこらに落ちていはしまいかと門の外へ来てみますと、そこには一人の老人の乞食がいて、三粒の赤い丸薬を汚い黒い掌に乗せて不思議そうに見ております。

 太郎さんは喜ぶまい事か、

「あっ、その丸薬は僕のだ。返しておくれ」

 と云いました――。

感想

一番印象に残ったところは最後のお祖父様のセリフだ。

 「それは太郎の云うのが本当であろう。どんな小さなものでも間違ったしかたで使う事がどんなに悪い事であるかという事が、太郎にだけ本当にわかったのだ。他のものは皆嘘と云っても、太郎だけ本当と思えば、それでいいではないか」

このセリフが今回の教訓だろう。

生命の塊で生命を奪う。

なんたる皮肉か。

 

そして私は、セリフの後半部分をメインと捉えた。

周りがなんと言おうとも、自分の中ではその通りなのだ、それでいいではないか。

周りにあわせて意思を曲げるな、意見を変えるな、確固たる自分であれ。

昨今では流されるままという人も多いのではないか。

しかしそれではダメだ。

しっかりと、自分たれ。

という夢野のメッセージなのではないかと思ったのだ。

おわりに

前回から少し間があいてしまいました。

今回からまたよろしくお願いします。

 

いつか『ドグラ・マグラ』について書ける日がくるといいんですが……

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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