母と子の愛の絆を守る男


こんにちは。

ナインです。

本日も本の紹介です。

今回紹介する作品は

 

杜子春

 

です。

また芥川です。

これで芥川シリーズ第7弾……

ここまできたら第10弾くらいまで書いてみようかなと思います……

芥川の作品は300以上ありますが、私は数えるほどしか読んだことがありません……

そのため、恥ずかしながら最近になって初めてこの作品を読みました。

                閑話休題

 

この作品は、伝奇小説を童話化したものです。

原作の方は結構きつめのエンドかなと思いますが、こちらは童話化しているので、児童向けのエンドになっているかなと思います。

他にも『杜子春』はアニメ化もされています。

アニメの方は3種類ほどあるので、合わせてご覧ください。

今回もネタバレありです。

あらすじ

 唐の都洛陽の西の門の下に、ぼんやり空を仰いでいる、一人の若者がありました。

若者は名を杜子春といって、元は金持ちの息子でしたが、今は財産を費い尽して、その日の暮しにも困る位、憐な身分になっているのです。

杜子春は相変らず、門の壁に見を凭せて、ぼんやり空ばかり眺めていました。

するとどこからやって来たか、突然彼の前へ足を止めた、片目眇の老人があります。

じっと杜子春の顔を見ながら、

「お前は何を考えているのだ」と、横柄に声をかけました。

「私ですか。私は今夜寝る所もないので、どうしたものかと考えているのです。」

老人の尋ね方が急でしたから、杜子春はさすがに眼を伏せて、思わず正直な答えをしました。

老人は暫く何事か考えているようでしたが、やがて、往来にさしている夕陽の光を指さしながら、

「ではおれが好いことを一つ教えてやろう。今この夕日の中に立って、お前の影が地に映ったら、その頭に当る所を夜中に掘って見るが好い。きっと車に一ぱいの黄金が埋まっている筈だから」――。

感想

テーマは「人間の情」といったところだろうか。

無一文の状態だったのが、偶々手に入れた大金によって都一の金持ちになる。

しかし周りに集まってくるのは金が目当ての人間ばかり、金がなくなれば直ぐに離れていくのも当然と言える。

そんなことを二度も経験すれば、杜子春が人間に愛想をつかすのも当たり前である。

そんなこんなで人間の薄情さに嫌気がさす杜子春は仙人を目指す。

仙人になるために、決して声を出してはいけないと言われた杜子春は、例え自分が殺されようと、地獄に落ちて責め苦にあおうと、決して声を出すことをしなかった。

しかし最後の最後、馬の姿となってしまった父母を、目の前で痛めつけられると、母を助けるため声を出してしまいます。

あれだけ人間に嫌気がさしていた杜子春ですが、最後には母を助けるために「情」を優先する。

人間の薄情さに嫌気がさした杜子春が、最後に選択したのは「情」であった。

テーマの扱いを面白い形で表現しているのは流石と言える。

おわりに

杜子春は幸運な人間でしょうか。

私はなんとも言えないです。

確かに大金持ちになって贅の限りを尽くすことは一つの憧れでもあります。

しかしその後、望んだことことはいえ、文字通りの地獄の苦しみを味わいたいかというと答えは否でしょう。

そうですね、もし私ならいくら人が言い寄ってきても無視をきめこむと思います。

それなりに慎ましく生活すれば一生食うには困らず、それなりの生活ができると思うので。

個人的にそれが一番幸せですから。

この作品のラストですが、私は好きな終わり方です。

私が望むような生活をしていくのだなと思うと、心安らぎます。

 

まったく関係ないですが、タイトルはあれです、東映版蜘蛛男ネタです。

別に鉄冠子のことではありません。

スル―してくださってかまいません。

 

最後までお読みくださりありがとうございます。

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